修理管理をExcelで行う方法|台帳の列・状態管理・便利な機能と、限界がくる前に知っておくこと
修理の案件を Excel で管理するなら、「1行=1案件」の台帳が基本形です。このページでは、台帳に入れる列と実務上の意味、状態(ステータス)の決め方、フィルターや条件付き書式など修理店で実際に使う機能、毎日の運用のしかた、Excel で起こりやすい問題、そして専用システムを考えるタイミングまでをまとめました。無料の修理管理台帳(Excel)も配布しています。
1. 修理管理をExcelで行う基本形
決まりは3つだけです。1行に1案件、ファイルは1つ・シートも1つ、行は消さない。受付のたびに下へ1行足していき、状態が変わったらその行の「状態」を書き換えます。お渡しが済んでも行は残し、絞り込みで隠します。
- 1行=1案件。同じお客様が2本預けたら2行。1行に2本まとめると、片方だけ直ったときに状態が書けません。
- ファイルは1つ。月ごと・年ごと・人ごとに分けると、電話番号で過去の修理を探せなくなります。300行でも3,000行でも、Excel には軽い量です。
- 行は消さない。お渡し済みの行は履歴です。「前回は何を直したか」はここから引きます。
受付の場で Excel に直接打ち込むのは、お客様を待たせるので現実的ではありません。受付は紙の受付票に書き、その日のうちに台帳へ1行転記する「2段構え」が、Excel で管理するお店の基本形です。このページは、その台帳の側の話です。
2. 台帳に入れる列(17列)と、その意味
列は多いほど良いわけではありません。増やすほど入力が抜けます。下の表で「◎」の10列があれば台帳として成り立ち、「○」は使う場面が来てから足せば十分です。「メーカー」「型番」「返却状況」「連絡状況」のような列は、別に持たず「品名・特徴」と「状態」「お渡し日」に含めます。
| 列 | 何を入れるか | 実務上の意味 | |
|---|---|---|---|
| 受付番号 | ◎ | 通し番号。お預かりタグと受付票にも同じ番号 | 棚の品物と台帳の行を結びつける唯一の手がかり。これが無いと検索も取り違え防止も効かない |
| 受付日 | ◎ | 預かった日 | 納期の起点。古い順に並べれば「長く残っている品物」が上に来る |
| お客様名 | ◎ | フルネーム。表記を揃える(姓と名の間は全角スペース、など) | 同じ人が別の書き方で2人に見えると、履歴が分かれる |
| 電話番号 | ◎ | ハイフンあり・なしをお店で統一 | 履歴を探すときの検索キー。名前より確実 |
| 品目 | ◎ | 種類(ギター・腕時計・革靴・スマホ など) | 絞り込みと、業種別の集計に使う |
| 品名・特徴 | ◎ | メーカー・型番・色・製造番号など、他の品物と見分けがつく書き方 | 同じ品目を複数預かったときの取り違え防止。列を分けるほど増やさなくてよい |
| 症状・ご要望 | ◎ | お客様の言葉のまま | 作業する人が症状を再現するため。「修理内容」とは別に持つ |
| 見積金額(税込) | ○ | 概算または確定の金額 | お客様に伝えた金額の記録。会計との差が出たときに説明できる |
| 見積承認日 | ○ | お客様が「進めてよい」と言った日。空欄=返事待ち | 空欄の行を毎日見るだけで、承認待ちで止まっている案件が拾える |
| 納期(予定) | ◎ | お客様に伝えた仕上がり予定日 | 今日より前で、まだお渡ししていない行=納期超過。並べ替えで見つかる |
| 状態 | ◎ | 決めた段階のどれか(次の章)。ドロップダウンで選ぶ | 台帳の心臓部。絞り込みも行の色分けもこの列で行う |
| 作業内容 | ○ | 実際に何をしたか | 次回来店で「前回はここを直しました」と言える。症状とは別の列に |
| 部品・材料 | ○ | 使った部品、発注待ちの部品 | 部品待ちで止まっている理由がメモに埋もれない |
| 担当 | ○ | 作業する人。1人のお店でも書く癖を | 2人以上になった瞬間に必須になる。「誰が見ているか」の答え |
| お渡し日 | ◎ | お客様に返した日 | 空欄=まだ店にある品物。返却状況の列を別に作らなくてよい |
| 会計(税込) | ○ | 実際に受け取った金額 | 月の売上はこの列を足すだけ |
| メモ | ○ | 連絡の希望時間、部品の入荷予定など | 何でも書ける列を1つ。ただし状態や納期はメモに書かず、専用の列へ |
◎=最初から必要な列(10列)、○=あると便利な列。「完了日」が欲しい場合は、状態が「作業完了」になった日をメモに書くか、列を1つ足します。
3. 状態(ステータス)の決め方
状態は「次に誰が何をするか」が変わるところで区切ります。逆に言えば、次にすることが同じなら、段階を分けなくてよいということです。修理店なら業種を問わず、次の7つで足ります。
| 状態 | 意味 | 次に誰が何をするか |
|---|---|---|
| お預かり中(見積もり待ち) | 受け付けたが、まだ金額を出していない | お店: 見て、見積もりを出す |
| 見積もり済み(ご回答待ち) | 金額を伝えて、お客様の返事を待っている | お客様: 進めるかどうか返事をする(お店: 数日返事が無ければ連絡) |
| 修理中 | 承認をもらい、作業している(部品待ちも含む) | お店: 作業する。部品待ちは「部品・材料」の列に理由を書く |
| 作業完了(未連絡) | 直ったが、まだお客様に伝えていない | お店: 連絡する。この行が残っているのが一番もったいない |
| ご連絡済み(引取待ち) | 仕上がりを伝え、お客様が取りに来るのを待っている | お客様: 取りに来る(お店: 長く残ったら再連絡) |
| お渡し済み | 返した。会計も済んだ | 誰も何もしない。行は消さず残す(履歴になる) |
| キャンセル | 見積もり後に中止、または引き取りのみ | お店: 品物を返す。行は残す |
- 増やしすぎない。「確認中」「診断中」「部品待ち」「調整中」と細かくすると、更新が追いつかず、結局どれも当てにならなくなります。部品待ちは「修理中」のまま、理由を「部品・材料」の列に書きます。
- 「未連絡」を1つ持つ。直ったことと、伝えたことは別です。この2つを分けておくだけで、完了連絡の漏れが目に見えるようになります。状態ごとに「何日止まったら気にするか」の線を決める運用は「修理の進捗管理」にまとめています。
- 言葉を固定する。台帳の「状態」は必ずドロップダウンから選び、手で打たない決まりにします。
4. 無料の修理管理台帳(Excelテンプレート)
上の17列と7つの状態をそのまま形にした台帳です。「状態」はドロップダウンで選ぶ形にしてあり、お渡し済みの行は灰色、返事待ちは黄色、作業完了(未連絡)は薄い赤に自動で変わります。見出し行は固定、フィルターも設定済みです。記入例が3行入っています。
- 記入例の3行は、自店の1件目を入れるときに上書きするか、行ごと削除してください(この3行だけは消して構いません)。
- 列の名前は変えずに使うと、後で専用システムへ移すときにそのまま取り込めます。列を足すのは構いません。
- 「修理品管理とは」のページで配っている台帳と同じファイルです。あちらは管理の考え方と紙・Excel・システムの比較、このページは Excel での運用のしかたを扱っています。
5. 修理店で実際に使う Excel の機能
難しい関数は要りません。使うのはこの6つで、どれもメニューから設定できます。テンプレートには最初から入っています。
フィルター(絞り込み)
「データ」→「フィルター」。見出し行の▼を押す
「状態」で「作業完了(未連絡)」だけを出せば、今日連絡すべき品物の一覧になります。「担当」で自分の分だけ、「品目」でギターだけ、も同じ操作です。台帳の使い方の8割はこれです。
並べ替え
見出し行の▼→「昇順」「降順」
「納期(予定)」の昇順で、期限が近い順に並びます。「受付日」の昇順にすると、長く店にある品物が上に来ます。並べ替えても受付番号があれば元の順に戻せます。
条件付き書式(行の色)
「ホーム」→「条件付き書式」→「新しいルール」→「数式を使用」
テンプレートでは、お渡し済みの行が灰色、返事待ちが黄色、作業完了(未連絡)が薄い赤になります。色は「状態」の列を見て自動で付くので、手で塗る必要はありません。納期超過の行に色を付けたい場合は、式に「=AND($J2<TODAY(), $O2="")」のように「納期が今日より前で、お渡し日が空」を入れます。
入力規則(ドロップダウン)
「データ」→「データの入力規則」→「リスト」
「状態」をリストから選ぶ形にしておくと、「完了」「完了済」「かんりょう」のような表記のばらつきが起きません。フィルターと行の色は表記が揃っていて初めて効きます。テンプレートは設定済みです。
日付の入れ方
「2026/9/10」の形で入力。今日は Ctrl + ;(セミコロン)
文字として「9月10日」と書くと並べ替えも計算もできません。スラッシュ区切りで入れると Excel が日付として扱い、納期の並べ替えと超過の色付けが効くようになります。
検索
Ctrl + F(Mac は ⌘ + F)
電話番号の下4桁で探すのが早いです。同じお客様の行が全部ヒットするので、「前回は何を直したか」がその場で分かります。お渡し済みの行を消さないのはこのためです。
6. 毎日の運用のしかた
台帳は作ることより、続けることの方が難しい道具です。「いつ・何を見るか」を決めておくと続きます。
受付のとき
受付票を書いたら、その日のうちに台帳へ1行足します。受付番号・お客様名・電話番号・品目・品名・症状・納期(予定)・状態「お預かり中」の8つで十分です。
状態が変わったとき
見積もりを伝えた、承認をもらった、直った、連絡した、渡した。その場で「状態」を変えます。後でまとめて直そうとすると、必ず1つ抜けます。
毎朝
「作業完了(未連絡)」と「見積もり済み(ご回答待ち)」の2つで絞り込んで、その行にだけ手を打ちます。台帳全体を眺める必要はありません。
週に1回
「納期(予定)」の昇順に並べ、今日より前でお渡し日が空の行を見ます。納期超過の芽をここで摘みます。
やらないこと
お渡し済みの行を消さない。年ごとにファイルを分けない(検索できなくなる)。同じ台帳を人ごとにコピーしない(どれが最新か分からなくなる)。
7. Excel 管理で起こりやすい問題
小さなお店で、1人で更新している間は、Excel の台帳は十分に働きます。問題が出るのは、件数が増えたときと、更新する人が2人以上になったときです。起こりやすいものを挙げます。
誰かが行を消してしまう
絞り込み中に行を選んで削除すると、見えていない行まで消えることがあります。「お渡し済みは非表示にする」で済ませ、削除はしない決まりにします。
状態の表記がばらばらになる
「完了」「完了済」「済」が混ざると、絞り込みで漏れます。ドロップダウンにしていても、コピー&ペーストで別の表記が入ることがあります。
同じお客様が別人に見える
「山田花子」「山田 花子」「ヤマダハナコ」は Excel では別の人です。電話番号で探す習慣がないと、履歴が分かれます。
人によって更新のしかたが違う
ある人はメモに納期を書き、ある人は納期の列に書く。列の意味を決めた紙が無いと、2人目が入った時点でずれ始めます。
完了の連絡を忘れる
「作業完了(未連絡)」の行を毎朝見る運用が崩れると、直った品物が棚に残ります。連絡は人の作業なので、台帳は「忘れている」ことを教えてはくれません。
納期超過を見落とす
納期の列に色が付く仕組みが無いと、超過は並べ替えをしたときにしか見えません。並べ替えを忘れた週は見えないままです。
返却済みかどうか分からない
お渡し日を書き忘れると、台帳では「まだ店にある」ことになります。棚に無いのに台帳にある品物が増えると、台帳が信じられなくなります。
同時に編集できない
Excel ファイルを2人で開くと、後から開いた人は読み取り専用になり、保存できません。Google スプレッドシートなら同時編集できますが、誰が何を変えたかは追いにくいままです。
過去の履歴を探すのに時間がかかる
電話番号で検索できる台帳なら数秒ですが、年ごとにファイルを分けていたり、表記がばらばらだったりすると、結局は記憶頼みになります。
ファイルが複数に分かれる
「台帳_最新」「台帳_田中さん用」「台帳2026」が並ぶと、どれが本物か分からなくなります。分かれた台帳を1つに戻す作業は、作り直しに近い手間です。
どれも Excel の欠点というより、「人が更新する一覧表」に共通する性質です。決まりを紙に書いて貼る、状態はドロップダウンだけにする、で多くは防げます。
8. Excel が向いているお店
次に当てはまるお店は、Excel の台帳で十分です。無理にシステムへ移す理由はありません。
- 修理の件数が少なく、店にある品物を頭で覚えていられる
- スタッフが1人で、台帳を更新するのも見るのも同じ人
- 管理したい項目が少なく、17列のうち半分も使わない
- お客様への連絡は電話で済んでいて、連絡の記録を別に取らなくても困っていない
- 受付票(紙)がしっかりしていて、台帳は「一覧を見るため」だけに使えばよい
費用がかからず、今日から始められて、自分で列を直せる。この3つは専用システムには無い、Excel の強みです。
9. 専用システムを考えるタイミング
「何件以上なら」という線は引けません。お店によって件数も人数も違うからです。代わりに、次のような出来事が起き始めたら、Excel の台帳が仕事の量に追いついていない印です。
件数が増えて、台帳を開かないと店にある品物が分からなくなった
頭で覚えられなくなった時点で、台帳は「見るもの」から「頼るもの」に変わります。頼るものには抜けがあってはいけません。
スタッフが2人以上になった
同時編集・表記のばらつき・更新方法の違いが、同時に始まります。1人のときには起きなかった問題です。
納期を管理する必要が出てきた
「いつまで」を約束する修理が増えると、超過を毎週の並べ替えで見つけるのでは遅くなります。
完了連絡の漏れが起きた
1回起きたなら、仕組みの問題です。台帳は連絡を促してくれないので、連絡そのものを自動にする道具が要ります。
預かり品の所在確認が増えた
「あの品物どこ?」が1日に何度も出るなら、台帳と棚がずれています。番号タグと台帳だけでは追いつかない量です。
過去の履歴を検索する機会が増えた
リピートのお客様が増えると、「前回の修理」を引く回数が増えます。電話番号ごとに履歴がまとまる形の方が速くなります。
お客様からの進捗確認の問い合わせが増えた
「今どうなっていますか」の電話が増えるのは、こちらからの連絡が追いついていない印です。状態を変えたら自動で伝わる仕組みが効く場面です。
共通しているのは、「台帳を見る」だけでは足りず、「台帳が教えてくれる」「台帳がお客様に伝えてくれる」ことが必要になる、という点です。
10. Excel 管理が大変になってきたら
リペアカルテは、楽器修理の現場で使うために作られた修理管理システムです。このページの台帳と同じ項目を1件1枚のカルテとして持ち、受付番号とお預かりタグは自動で付きます。状態を「作業完了」「見積もり済み」に変えると、LINE やメールでお客様に連絡が自動で届くので、「未連絡」の行を毎朝見る仕事が無くなります。履歴は電話番号ごとにまとまり、スタッフ全員が同じ画面を見られます。
このページの台帳を使っているなら、Excel をそのまま取り込めます(列の順番が違っても、余分な列があっても構いません)。お渡し済みの過去の行も一緒に入れれば、履歴として残ります。フリープランは月100件まで無料で、クレジットカードの登録は不要です。
業種ごとの使い方はこちら。
11. よくある質問
Excel ではなく Google スプレッドシートでもよいですか?
はい。このページのテンプレートはスプレッドシートに取り込んでも、ドロップダウンと行の色がそのまま使えます。複数人で同時に編集する場合はスプレッドシートの方が向いています。ファイルの共有範囲(誰が見られるか)だけは確認してください。
受付票(紙)と台帳(Excel)の両方が必要ですか?
受付の場では、お客様と一緒に品物を見ながら紙に書く方が早く、状態やキズの記録も残せます。台帳はその一覧です。受付票を書いてから台帳に転記する「2段構え」が、Excel で管理するお店の基本形です。受付票の作り方は別のページにまとめています。
間違えて行を消してしまいました。
直後なら Ctrl + Z(Mac は ⌘ + Z)で戻ります。気づくのが遅れた場合は、ファイルのバージョン履歴(OneDrive・Google ドライブに置いている場合)から戻せます。予防としては、お渡し済みの行を「消す」のではなく「絞り込みで隠す」運用にし、月に1回はファイルの複製を別の場所に置いておきます。
お客様の名前や電話番号が入っている台帳の扱いで気をつけることは?
台帳は個人情報の一覧なので、店の共有パソコンに置く場合はログインを分け、メールで送り合わない、外部のクラウドに置くならお店の判断で共有範囲を絞る、といった基本を守ってください。詳しい取り扱いはお店の方針や、必要に応じて専門家にご確認ください。
台帳を専用システムに移すとき、全部入力し直しになりますか?
リペアカルテの場合は、このテンプレートと同じ列名の Excel・CSV をそのまま取り込めます。列の順番が違っていても、余分な列があっても構いません。お渡し済みの過去の行も一緒に取り込めば、履歴として残ります。
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