修理の工賃の計算方法と料金の決め方|部品代・工賃・診断料と、利益が残る値付け(計算例つき)
修理の料金は「部品代・工賃・診断料」に分けて決めると、作業ごとに利益が残っているかが見えるようになります。この記事の数字は、架空の「サンプル修理工房」の例です。
1. 要点
- 料金は、部品代・工賃・診断料(見積もり料)の3つに分けて決めます。
- 工賃は「1時間あたりの工賃 × その作業にかかる時間」。1時間あたりの工賃は、1か月に回収したい額を、実際に作業に使える時間で割って出します。
- 部品代は、仕入れ値に発注・送料・保管・入れ替えの手間を足して決めます。
- 作業ごとに「1時間あたりいくら残ったか」を確かめると、安すぎる作業が見つかります。
- お客様に見せる値段は、消費税を含めた総額で表示します(総額表示)。
2. 修理の料金は3つに分けて考える
「この修理はいくら」と1つの金額で覚えていると、部品が値上がりしたときや、思ったより時間がかかったときに、どこで損をしているのかが分かりません。見積書の明細と同じく、3つに分けて考えます。
| 分け方 | 何の代金か | 決め方 |
|---|---|---|
| 部品代 | 交換した部品・材料の代金 | 仕入れ値に、発注・送料・保管・不良品の入れ替えの手間を足して決める |
| 工賃 | 作業の時間と技術への代金 | 「1時間あたりの工賃(時間単価)× その作業にかかる時間」で決める |
| 診断料・見積もり料 | 分解・点検して原因と金額を出す手間 | 修理を頼まれたら工賃に含めるか、断られたときだけいただくかを先に決める |
明細の分け方と見積書の書き方は「修理見積書のテンプレートと書き方」にまとめています。
3. 1時間あたりの工賃(時間単価)の出し方
1時間あたりの工賃 = 1か月に工賃で回収したい額 ÷ 1か月に作業に使える時間
サンプル修理工房(店主1人)の例で計算します。金額は消費税を除いた額で考えます(税込の値段は最後に出します)。
1か月に工賃で回収したい額
| 家賃・光熱費・通信費 | 120,000円 |
|---|---|
| 道具・消耗品・システム・保険など | 40,000円 |
| 店主の取り分(生活費・税金・社会保険・蓄えを含む) | 350,000円 |
| 合計(1か月に工賃で回収したい額) | 510,000円 |
1か月に作業に使える時間
| 営業する時間 | 8時間 × 22日 = 176時間 |
|---|---|
| 受付・連絡・会計・掃除・仕入れに使う時間 | 約4割(70時間) |
| 修理の作業に使える時間 | 約106時間 |
510,000円 ÷ 106時間 = 約4,811円。きりのよい1時間あたり4,800円を、このお店の時間単価にします。
店主の取り分は「いま手元に残っている額」ではなく、「続けるために必要な額」で入れます。ここを低く入れると、計算した料金でも暮らしが成り立ちません。作業に使える時間は、1〜2週間、実際に作業した時間をメモして確かめると正確になります。
部品の仕入れ代は、ここには入れません。部品代として、作業ごとにいただくからです。
4. 作業ごとの工賃と部品代の決め方
作業ごとの工賃は、時間単価 × その作業にかかる時間です。かかる時間は、慣れた人がふつうに作業したときの時間(標準時間)で決め、作業のたびに変えません。早く終わった日も遅くなった日も同じ料金にすると、お客様にも説明しやすくなります。
部品代は、仕入れ値 + 手間の分です。サンプル修理工房では、送料・発注・保管・不良品の入れ替えの手間として、仕入れ値に5割を上乗せしています(例: 仕入れ800円 → 1,200円)。上乗せの割合はお店と部品によって違うので、安い小さな部品ほど割合を大きく、高い部品ほど小さくする考え方もあります。
| 作業(架空) | 標準時間 | 工賃(4,800円/時) | 部品代 | 合計(税抜) |
|---|---|---|---|---|
| 作業A(部品交換と調整) | 0.5時間 | 2,400円 | 1,200円 | 3,600円 |
| 作業B(分解清掃) | 1.5時間 | 7,200円 | 600円 | 7,800円 |
| 作業C(部品の作り直し) | 3時間 | 14,400円 | 3,000円 | 17,400円 |
お客様が部品を持ち込む場合は、部品の上乗せが無くなるぶん、工賃を少し高くするか、動かなかったときの扱い(工賃はいただく、など)を先に決めておきます。
5. 診断料・見積もり料の考え方
見積もりのために分解・点検する手間をどう回収するかは、3つのやり方があります。どれを選んでも、受付のときにお客様に伝え、受付票に書いておくことが大切です。
| やり方 | よいところ | 気をつけること |
|---|---|---|
| 見積もりは無料 | 気軽に持ち込んでもらえる | 断られた分の手間はほかの修理の料金で回収することになる。分解が要る品物が多いお店は負担が大きい |
| 診断料をいただき、修理を頼まれたら工賃に充てる | 断られても手間の分は残る。頼んだお客様は実質の負担がない | 受付のときに金額と「修理したら充てる」ことを伝え、受付票に書いておく |
| 断られたときだけ見積もり料(キャンセル料)をいただく | 頼んだお客様には説明が要らない | 受付のときに伝えていないと、断られたあとに請求しにくい。金額は手間に見合う額にする |
お客様(消費者)との契約で、解除したときに支払ってもらう額をあらかじめ決めておく場合、消費者契約法では、同じ種類の契約の解除でお店に生じる「平均的な損害」を超える部分は無効とされています。見積もり料・キャンセル料は、実際にかかる手間に見合う額にしておき、お客様から求められたら、その額の考え方を説明できるようにしておきます(同条2項は、説明に努めることを求めています)。金額が妥当かどうか迷うときは、弁護士や消費生活センターなどの専門家に確かめてください。
6. 作業ごとに利益が残っているかを確かめる
料金を決めたら、よく受ける作業について、(売上 − 部品の仕入れ値・外注費)÷ かかった時間を計算します。これが時間単価(4,800円)より大きく下回る作業は、料金か作業のやり方を見直す候補です。
| 作業(架空) | 売上(税抜) | 仕入れ値 | 差し引き | かかった時間 | 1時間あたり |
|---|---|---|---|---|---|
| 作業A | 3,600円 | 800円 | 2,800円 | 0.5時間 | 5,600円 |
| 作業B | 7,800円 | 400円 | 7,400円 | 1.5時間 | 約4,930円 |
| 作業D(よく受ける安い作業) | 2,000円 | 600円 | 1,400円 | 0.75時間 | 約1,870円 |
この例では、作業Dは件数が多いのに1時間あたり約1,870円しか残っていません。料金を見直すか、まとめて作業して時間を短くするか、受付で「ついで」に頼まれる形にするかを考えます。数か月に1回、件数の多い作業から順に確かめれば十分です。
7. 料金表の作り方とお客様への見せ方
- 値段は税込の総額で表示します。消費税の課税事業者がお客様(消費者)に値段を表示するときは、消費税を含めた総額で表示することが決まっています(総額表示)。「4,800円(税込5,280円)」のように税込の額がはっきり分かれば、税抜の額を並べて書いても構いません。
- 「〜円から」は、何で上がるかと一緒に書きます。「5,280円〜(部品の交換が要る場合は部品代が加わります)」のように書くと、見積もりで金額が上がっても行き違いになりにくくなります。
- 見積もりが要る修理は、そう書きます。値段を書けない修理は「点検してからお見積もり。見積もり料○○円(修理されたら工賃に充当)」と、見積もりの扱いだけを書きます。
- 追加の作業が要るときは、作業の前に連絡します。見積もりより上がる場合の連絡の決まりも、受付のときに伝えておきます。
税込の値段の計算と、請求書・領収書への書き方は「インボイス対応の請求書・領収書の書き方」にまとめています。
8. 値上げのしかた
- 理由と新しい料金を決める。仕入れ値・家賃・時間単価の計算をやり直し、どの作業をいくらにするかを決めます。
- 始める日を決めて、先に知らせる。1か月ほど前から、店頭・ホームページ・お知らせで伝えます。
- 見積もり済みの修理は、その金額のまま。新しい料金は、始める日より後に受け付けた修理から使います。
9. 料金の決め方でよくある失敗
近所の相場だけで決める
家賃も作業の速さも違うお店の値段に合わせると、自分のお店では赤字の作業が出ます。相場は、自分で出した料金が高すぎないかを確かめるときに見ます。
営業時間を全部、作業時間として数える
受付・電話・会計・仕入れも仕事ですが、工賃はいただけません。作業に使える時間で割らないと、時間単価が低く出ます。
部品を仕入れ値のまま出す
発注の手間、送料、届いた部品が不良だったときの入れ替え、在庫として寝かせる分は、どこかで回収する必要があります。
値上げを先延ばしにする
仕入れ値や家賃が上がっても料金が同じなら、同じだけ働いて手元に残る額が減っていきます。年に1回、料金を見直す日を決めておきます。
10. Repair Karteで料金と利益を記録する
Repair Karteでは、本見積もりの明細に工賃と部品を行ごとに分けて入れられ、その明細がお見積書・請求書・領収書にそのまま載ります。金額は税込でも税抜でも入れられ、お客様に見せる金額は税込で表示されます。
よく使う部品は商品・在庫に仕入値と売値を入れておくと、見積もりで品名を選ぶだけで売値が入ります(すべてのプラン)。日別・月別の売上と、担当者別・品目別の内訳は売上ダッシュボード(プロ)で見られ、CSVで書き出して計算にも使えます。
11. 出典
2026年11月時点に、次の公的なページで確かめた内容です。制度は変わることがあるので、使う前に最新のページを見てください。
- 国税庁 タックスアンサー No.6902「総額表示」の義務付け
- e-Gov法令検索 消費者契約法(第9条 消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
- 消費者庁 消費者契約法 逐条解説(第9条 平均的な損害)
この記事の金額と計算は、架空のお店の例です。実際の料金は、お店の費用と作業時間から決めてください。税の扱いは税理士に、契約の条項は弁護士などの専門家に確認してください。