修理の保証と法律|修理後の不具合・預かり品の保管・引き取りに来ないお客様への対応
修理のあとに不具合が出たとき、お店とお客様のあいだで何が決まっているのか。預かった品物を受け取りに来てもらえないとき、何をしておけばよいのか。条文に書いてあることと、お店で決めておくことを分けて解説します。
1. 要点
- 多くの修理は民法の「請負」にあたり、仕上がりが約束と違えば、お客様は直し直し・減額・損害賠償・解除を求められます。
- お客様がそれを求めるには、不具合を知った時から1年以内にお店へ知らせる必要があります(お店が知っていて黙っていた場合などは別)。
- お店の「保証」は、民法の決まりとは別に、お店が約束するものです。期間・対象・対象外・対応の4つを決めて紙に書きます。
- 預かった品物は、返すまで大切に保管する責任があります。修理代を払ってもらうまで、品物を返さずにおくこともできます(留置権)。
- 受け取りに来ないお客様には、記録の残る方法で段階を踏んで連絡します。処分や売却を考える前に、弁護士などの専門家に相談します。
2. 修理後に不具合が出たとき、民法で決まっていること
| 修理の契約 | 多くの修理は「請負」(仕事を完成させ、その結果に対して代金を受け取る契約)にあたります(民法632条)。 |
|---|---|
| 仕上がりが約束と違うとき | お客様は、直し直し(追完)・代金の減額・損害賠償・契約の解除を求められます(民法559条で、売買の決まり562条〜564条を請負にも使う)。 |
| お客様が知らせる期間 | お客様が不具合(契約の内容に合わないこと)を知った時から1年以内にお店へ知らせないと、これらを求められなくなります(民法637条1項)。ただし、お渡しのときにお店がそれを知っていたか、重大な不注意で知らなかったときは、この期間の決まりは使えません(同条2項)。 |
| お客様の材料・指示が原因のとき | お客様が渡した材料や、お客様の指示が原因の不具合は、原則として求められません。ただし、お店がその材料や指示が適当でないと知りながら伝えなかったときは別です(民法636条)。 |
このほかに、お金などを請求する権利は、請求できることを知った時から5年、請求できる時から10年で、時効で消えることがあります(民法166条)。
実際に戻ってきた品物が「お店の作業の不具合」なのか「新しい故障」なのかは、品物を見てみないと分かりません。まず元の修理の記録(いつ・何を直したか)を探し、お客様と一緒に品物を確かめてから判断します。判断が難しいときや、お客様と意見が分かれたときは、弁護士や消費生活センターなどに相談してください。
3. お店の保証の決め方と書き方
民法の決まりとは別に、お店が「○日間は無償で直し直します」と約束するのが、お店の保証です。決めておくのは次の4つです。
| 期間 | お渡しの日から○日。同じ種類の作業は同じ期間にする |
|---|---|
| 対象 | お店が行った作業と、交換した部品について、直した不具合と同じ症状 |
| 対象外 | お渡し後の落下・水濡れ・使い方による傷みなどの新しい故障、直していない箇所の故障 |
| 対応 | 無償で直し直す。直せないときは、その修理の代金をお返しする、など |
決めたことは、領収書・お預かり証・店頭の掲示・ホームページに、同じ言葉で書きます。書いていない保証は、お客様の記憶とお店の記憶が食い違います。
文例(期間と内容はお店に合わせて変えてください)
修理保証: お渡しの日から90日間、当店で行った作業と交換した部品について、同じ症状が出た場合は無償で再修理いたします。落下・水濡れなどお渡し後の新しい故障、修理していない箇所の故障は対象外です。この控えか受付番号をお持ちください。
気をつけたいのは、保証の文面で「当店は一切責任を負いません」のように、お店の責任を全部なくしてしまう書き方です。消費者契約法では、お客様(消費者)との契約で、事業者の損害賠償の責任を全部免除する条項などは無効とされています(8条)。消費者庁の解説でも、「一切、損害賠償・交換・修理をしない」という形の条項が、この無効にあたる例として挙げられています。また、消費者の利益を一方的に害する条項も無効とされることがあります(10条)。文面に迷ったら、専門家に確かめてください。
4. 預かった品物を保管する責任
修理のために預かった品物は、お客様に返すまで、お店が保管します。特定の物を引き渡す約束をした人は、引き渡すまで「善良な管理者の注意」をもってその物を保存しなければならないと決められています(民法400条)。ふだんの自分の物の扱い以上の注意で保管する、と考えておきます。
- 受付のときに、傷・欠け・付属品をお客様と一緒に確かめ、写真や受付票に残します。
- 預かった品物には受付番号の札を付け、置き場所を決めます(取り違え・紛失を防ぐ)。
- 高価な品物や預かる期間の長い品物は、置き場所と保険の範囲を確かめておきます。
修理が終わっても代金を払ってもらえないとき、お店はその品物について生じた代金を払ってもらうまで、品物を手元に置いておくことができます(留置権。民法295条)。
5. 引き取りに来ないお客様への対応
仕上がった品物が棚に残る理由の多くは、連絡が届いていないか、受け取りに来る時間が取れないかです。まず次の順で連絡し、それぞれの日付と方法を記録します。
完了の連絡(当日)
仕上がったこと、受け取れる日時、お支払い額を伝えます。電話がつながらなければ、留守番電話やメッセージを残し、連絡した日と方法を記録します。
2回目の連絡(1〜2週間後)
まだ受け取りに来ていないことと、受け取りの方法(来店・郵送など)を伝えます。連絡先が変わっていないかも確かめます。
期限を書いたお知らせ(さらに数週間後)
「○月○日までにお受け取りください。それまでにご連絡がない場合は、改めてご相談させてください」のように、日付を入れて伝えます。手紙やメールなど、送ったことが記録に残る方法で送り、写しを残します。
処分や売却を考える前に確かめること
受け取りに来ない品物でも、持ち主はお客様です。受付のときに「○か月を過ぎたら処分します」と書いて同意をもらっていても、それだけで処分してよいとは限りません(消費者契約法10条で無効とされる場合があります)。
民法には、お客様が受け取らない・受け取れない場合に、品物を供託所に預ける決まり(供託。494条)や、預けるのに向かない品物などを裁判所の許可を得て競売し、その代金を供託する決まり(497条)があります。また、お客様が受け取らない間は、お店の保管の注意は「自分の財産と同じ注意」で足りるとされ、そのために増えた費用はお客様の負担とされています(413条)。
どの方法が使えるかは、品物と事情によって変わります。処分・売却・保管料の請求を考える前に、連絡の記録をそろえて、弁護士などの専門家に相談してください。
6. 受付のときの同意事項に書いておくこと
あとから行き違いになりやすいことは、受付のときに見せて、同意をもらっておきます。
- 修理の保証の期間・対象・対象外
- 見積もり料・キャンセル料の金額と、かかる場合
- お預かりの期間の目安と、仕上がり後に受け取りに来ない場合の連絡のしかた
- 預かったときの状態(傷・欠け・付属品)をお客様と確かめたこと
- 修理の途中で、もともと弱っていた部分が傷むおそれがある作業では、そのこと
受付票の書き方は「修理伝票テンプレートと書き方」に、見積もり料・キャンセル料の決め方は「修理の工賃と料金の決め方」に、仕上がりの連絡を抜かさない方法は「修理完了の連絡忘れをなくす方法」にまとめています。
8. 出典
2026年11月時点に、次の公的なページで確かめた内容です。制度は変わることがあるので、使う前に最新のページを見てください。
- e-Gov法令検索 民法(第166条・第295条・第400条・第413条・第494条・第497条・第559条・第562条〜第564条・第632条・第636条・第637条)
- e-Gov法令検索 消費者契約法(第8条・第10条)
- 消費者庁 消費者契約法 逐条解説
この記事は、条文に書いてあることを紹介する一般的な情報で、法律の助言ではありません。実際の品物やお客様との行き違いにどう当てはまるかは、弁護士や消費生活センターなどの専門家に確認してください。